文商 文田中

言葉の価値を開発提案する文章作成の総合事業

公開ライブラリ

『読ませる自分史のつくりかた』

第1章 個人史をつくる前に

4.本をどうしたいか(印刷・製本)

 本を作って配りたいだけ、つまり、印刷製本はするものの、販路に乗せず身内や知人に直接手配りしたいという人は、原稿を印刷所に持ち込んで製本し、刷り上がった本の納品を受ける。流通まで希望する人は、自費出版の専門会社を通し、書店配本や販促のサービスを受ける。

 私の事業は原稿制作までで、印刷・製本・流通は含めていない。そのためこれらの専門的なノウハウは持っていないのだが、ご要望がれば可能な限りお手伝いする(制作管理業務)。

 具体的にどういう業務かというと……

 私が依頼者と印刷会社の間に立ってこれらを企画提案し、制作進行を管理する。依頼者自身にこだわりがあるなら、直接印刷会社と交渉してもらって構わないのだが、何分こまごましたことなのでお任せいただくケースが多い。

・印刷・製本について

 印刷・製本において、ページ数と印刷部数はお金に結び付くことなので、個人史制作の前段階である程度目星をつけておいた方がいい。

 一冊ベース考えれば、ページ数が増えれば増えるほど当然値段は高くなる。装丁や紙質や色数(モノクロ・カラー・特色)にこだわれば際限がない。  だが部数はそうではない。多ければ多いほど総額が高くなるのは当たり前だが、単純な比例関係にはない。

 印刷は、大別してオンデマンド印刷とオフセット印刷の二つがある。オンデマンドはレーザープリンタ出力で、言うなれば自宅プリンタのようなもの。必要な分を必要なだけ刷り出せるので少部数印刷に適している。ただ、コスト的にオフセットより割高で、大量印刷には向かない。

 オフセット印刷は、版を作って転写印刷するもので、精度が高く、大量印刷に向いている。基本価格に製版代がかかるため、少部数だと割高になる。

 どちらの印刷方法をとるかは、印刷会社に必要部数を伝えれば提案してくれるだろう。五〇〇冊くらいまでならオンデマンド印刷が主流だと思う。

 以下に私が業務で体験した、部数と印刷費の一例をご紹介しよう。

 ある個人史の依頼で印刷製本まで引き受けた時、依頼者が限定三〇部にこだわった。印刷会社に見積りを依頼すると、総額七十五万円とのこと。一冊単価にして二万五千円。スピン(しおり紐)付き・ハードカバーとはいえ、目の飛び出る高額である。そこでためしに五〇部の再見積もりを取ったところ、総額七十六万円(単価一万五千二百円)との返事が来た。総額はわずか一万円しか違わないのに、出来高は一・六倍強もある。やや極端だが、これが印刷価格の実際の雰囲気である。

・一冊の本のボリュームは?

 個人史に限らず、本を制作する際に、「一冊の本に適したボリュームは、原稿用紙何枚くらいですか?」という質問をよく受ける。

 心配の根幹はよく分かる。出来上がった個人史の原稿を印刷にかけて、ぺらぺらのパンフレットみたいな厚さにしかならなかったら、まるで自分の人生が薄っぺらのようで残念だ。かといって莫大なボリュームを書くのは大変。書きすぎてページ数が増えるとコストまで増えてしまう。

 私が経験上「このくらいの分量なら最低限の書籍の体裁をとりうる」と考えるボリュームは、四〇〇字詰め原稿用紙二〇〇枚くらいだと思う。個人史はA5判で作られることが多いが、ひとまわり小さい四六判やB6判で作っていけないわけではない。このくらいの判型で、本文は広めのマージンをとり、やや大きめの文字、ゆとりある行間にする。章ごとの扉ページは独立させ、巻頭か巻末に写真や年表、家系図など付録を配置する。これで製本すればそれなりの厚みのある冊子が仕上がるだろう。

文商 文田中

ふみしょう たなか