第1章 代筆家のおしごと
吾輩は代筆家である
4.自伝作成はチームプレイ
もう一つの長編原稿である自伝は、不思議なことに、自伝になる当人が依頼してくることが、ほぼありません。家族や社員など周りの方々から、「私たちのあるじの自伝を書いてくれ」とお問い合わせをいただきます。その後、私が出張してご当人にお会いし、インタビューを行い、原稿を進めていく、というのが主な流れです。
自伝になるくらいの方ですから、みなさん高齢で、自分語りを進めるうちに舌が乗って止まらなくなるんですが、最初はどなたも要領(ようりょう)を得ず、話す言葉はぎこちない。人生の振り返りも、あんまりよくできていなかったりします。いざ振り返って語りだし、私の客観的な質問を経てはじめて、記憶の矛盾に気付いたり、未解決だったできごとを思い出したり。ご当人が自分の人生の中でピンときていないことは、意外にたくさんあるものです。これも小説の時と同じように、私が思い切って質問や提言することで、主観を破っていきます。ご当人とゴーストライターである私の協力関係で、積み上げていく作業です。チームワークによるブックライティングですね。
なお、さくら文研の自分史作成ノウハウについては、別著『本気で自伝・自叙伝・自分史を考える人のための 読ませる個人史のつくりかた』(あいあおい・さくらノベルス)があります。大手通販サイトで購入可能です。ご興味のおありの方は、ご照覧あそばせ。